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14.06.11Media
【2014.6.11 朝日新聞】古民家の宝庫 再生じわり
2014.6.11 朝日新聞に掲載されました。
Archis設立前の取り組みになります。
古民家の宝庫 再生じわり
職人の伝統技術継承めざす
新築ではなく、古い家を改修して暮らしたい―。県内で古民家再生がじわりと広がっている。長府、萩、山口、柳井など江戸~明治時代の物件が多く残る山口県は古民家の宝庫。再生を手がける民間団体は、伝統的な造りの家の改修を重ねることで、県内の職人の技を継承することを目指す。
山口の民間団体 地元大工と築95年の改修着手
山口市小郡下郷の大きな古民家。先月31日から2日間、古民家再生の民間団体「おんなたちの古民家」の代表理事・松浦奈津子さん(33)と理事の原亜紀夫さん(45)、地元の大工が改修前の調査に入った。
依頼したのは木村恒一さん(46)。家は約95年前、木村さんの曽祖父が建てた。数年前まで祖父母が暮らし、東京生まれの木村さん自身は住んだことはないが、「曾祖父が自信を持って建てた家を守りたい」と再生することにした。
古民家とは、主に築50年以上で日本古来の建築技術「伝統構法」で建てられた家を指す。1950年の建築基準法施行以前のもので、基礎をコンクリートで固めず、石の上に「束」と呼ばれる木材を置いただけだったり、ボルトや釘を使わず、木材に彫り込みを入れてはめ込んだりしている。
松浦さんが古民家再生団体を立ち上げたのは2011年。県内の古民家に住んでいる人の話を聴いて回り、「ボロい、寒い、暗いといわれる古民家をおしゃれでかっこいいプラスのイメージに変えたい」と、インターネットのホームページで情報発信を始めた。建築基準法が施行されたいま、同じような家は建てられない。「壊せばなくなる一方。文化的にも価値がある古民家を残していきたい」と、再生に取り組んでいる。
塗装関係の会社役員をしていた原さんが加わったのは昨年のことだ。理事になるにあたり、それまで京都や奈良など県外から呼んでいた職人を「全員山口の人にすること」との条件を出した。
県内にも瑠璃光寺(山口市)や雪舟庭(同)、錦帯橋(岩国市)を造った人たちはいるが、伝統構法の技術を必要とする仕事がなくなれば、職人の技も廃れてしまうからだ。今では大工、左官、塗装とみな県内の職人が担う。
同団体によると、12年は月1件程度だった古民家に関する相談が今年は3,4倍になり、メールも含めると月に10件ほど問い合わせがあるという。基礎や柱、全体にわたる大がかりな改修を手がけた古民家は、12年は広島県廿日市市1件、山口市2件の計3件だったが、13年は岩国市2件、山口市2件、宇部市1件の計5件になり、14年はすでに山口市で3件を予定している。
「全国的な古民家ブームは5,6年前からあったが、ここ2.3年、県内での相談が増えていると実感する」と松浦さん。原さんは「いつか日本の家造り文化である古民家を海外に移築してみたい」と語る。(寺尾佳恵)