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16.07.20Media
【2016.7.20 日本経済新聞】山口発 8万の日本酒
2016.7.20 日本経済新聞に掲載されました。
山口発 8万円の日本酒
異業種から世界にアピール
山口県のベンチャー企業が1本8万8000円(750ml、税抜き)の日本酒を売り出す。限定1000本の「夢雀(むじゃく)」で来月の発売に向けて準備も佳境だ。デビューの地もフランス、香港、ドバイという国際派。日本酒は世界で人気が高まっている。経緯を仕掛け人であるArchis(山口市)の松浦奈津子社長に聞いた。
――日本酒として突出した価格設定です。
「まさにそこが狙い。ワイン、シャンパンなどは数十万、数百万という値がつくものがあるのに日本酒にはない。世界で注目されて、同じ醸造酒なのにおかしいと思っていた。もちろん価格に見合うだけの材料と手間をかけている」
「伊勢神宮の神米であるイセヒカリは、山口県で栽培、保存を行われていた縁がある。故郷の岩国でも作られていた。日本を代表する酒ということで、これが使えないかと思いついた。たんぱく質が低く、硬いので酒米に向いている。無農薬栽培米を1割8分まで磨いた。仕込みは岩国の錦川最上流の水を使い、地元の堀江酒場にお願いした。5月に第1号が完成した」
――酒名の由来は。
「昨年の5月に堀江酒場の杜氏(とうじ)さんと関係者が集まって、錦町の広瀬八幡宮の宮司さんに神事をしてもらい、イセヒカリの田植えをした。名前は堀江酒場の代表的なお酒『金雀』の『雀』に、みんなの『夢』を乗せて世界に発信したいと『夢雀』と命名した。今年も田植えを終えたところだ」
――酒をまったく異業種の企業が売るのは難しい。
「これはタイミングとしか言いようがないが、山口県が昨年、国内初の試みで女性の起業を支援する『女性創業応援やまぐち』プロジェクトを始めた。応募したところメーン事業として認定された。始めてみてわかったことだが、酒の製造販売には酒税の免許、小売業や卸業の免許など膨大な手続きが必要だった。これらが県を通じて、国税庁や内閣府などの協力でクリアできたのは幸運だった」
「これまでは古民家を再生する仕事をしていた。山口市阿東にモデルとなる『旧山見邸田楽庵』を立ち上げたところから縁が生まれた。地域活性化のために地元で米作りを始めた。阿東は全国でも上位に入る米作りの技術があるが、知られていない。田楽米として売り出したら、東京の百貨店でも扱ってもらえるようになった。これを原料にした菓子も評価してもらえた。仲間と次は酒か、と笑い話をしていたところだった」
――今後の展開は。
「山口にはまだ知られざる美しい場所、価値あるものが数多くある。これをどうやって売り込んでいくか。酒を突破口にいろいろな仕掛けをしていきたい」